- 脳画像の種類と特徴、見るべきポイントが分かる
- 脳画像を見る順序が分かる
脳画像って何を見たらいいの?
それに、いろんな種類もあって、それぞれ特徴や違いがあるってこと?
素晴らしい着眼点だね!
分かりやすく、一つ一つ説明していくね。
CTとMRIの概要
似ている…笑
違いは以下の表に示しますね。
CT | MRI | |
撮影原理 | X線の吸収 | 磁気の共鳴 |
撮影方法 | 単純と造影撮影が基本 | 多岐にわたる |
放射線被ばく | あり | なし |
骨・空気の影響 | あり | なし |
画像 | X線フィルム同様、骨は白く、空気は黒く見える 水(血液)は白く映る | 骨も空気も無信号となり、区別されない |
基本 | 横断面 | 任意の断面 |
撮影時間 | 比較的短い(10~15分) | 比較的長い(30分程度)そしてうるさい(笑) |
特化部位 | 脳・肺・腹部・骨 | 脳・脊髄・関節・骨盤腔内臓器 |
頭蓋骨内病変 | 頭部外傷・脳出血・くも膜下出血 | 早期の脳梗塞・脳ドッグ |
長所 | 撮影時間が比較的短く、容易に断層像が得られる。 頭部救急病変(出血の疑いなど)への適応が高い。 骨の情報が得られる。 | 放射線被ばくが無く、組織間コントラストに優れる。 任意の断層像を得ることが出来、撮像法を変えることで病変の質的評価が出来る。 造影剤なしで血管の画像が得られる。 |
短所 | 放射線被ばくがある | 体内に金属(ペースメーカーなど)が入っている方は 検査できない。 撮影時間が長く、狭いところに入るイメージ。(閉所恐怖症や安静が保てない場合は難しい) 検査中、工事現場のような大きな音が聞こえる。 |
ややこしいので、気になった時に比較できるようにこのページをブックマークをしておくくらいで良いと思います(笑)
患者さんとの会話で「あれ、この人って画像撮ってるのかな」と気になった時には何か変な機械に入って検査とかって受けましたか?その時、10分程度で終わった(CT)のか、それとも30分くらいする、うるさい機械(MRI)でしたか?って聞けるし、知ってるだけで話題にも出せるね!
患者さんとの話題が一つでも増えるだけで有意義な時間にもなるし、その積み重ねが信頼関係の構築にも繋がります!ではこれからCTとMRIについて詳しく説明していくね!
CTとMRIの鑑別のポイント
まず、CTは「X線」、MRIは「磁力」を用いるという事を上記の表に示しました。これを知っているだけでこの後に出てくる高吸収、高信号などの複雑な表現の理解が楽になります!
CT
・脳出血は白く映り、時間経過に伴い白から黒へ変化。
・脳梗塞は黒く映るが、早期の脳梗塞画像は映らない。
出血部位はX線をより吸収するため、白い部分を高吸収域と呼ぶよ!逆に脳脊髄液や梗塞巣は黒く映り、低吸収域と呼ぶんだ。それから短時間で撮影可能なので、脳出血の診断に活かされているんだよ!
CTは意外と分かりやすかったかも!
次はMRI…種類が多いから、一個ずつ教えてください~。
MRI
MRIは、磁場の信号が高いか低いかなので、高or低信号と呼びます。
T1
・CT画像と同様に出血部位は高信号域(白く映る)
・脳脊髄液と梗塞巣が低信号域(黒く映る)
・CTよりも脳回や脳溝の形状を把握しやすい反面、梗塞巣が目立たない。
T2
・脳脊髄液と梗塞巣が高信号域
・脳実質が低信号域になる(灰白質は灰色、白質は黒色)⇒脳腫瘍の鑑別に有効!
・梗塞巣が高信号になるため把握はしやすいが、脳溝にある脳脊髄液も高信号域になるため鑑別が難しいという欠点がある。
- T2は脳腫瘍の鑑別に有効!
- 灰白質とは、機能を持つ場所(大脳皮質の表面[ブロードマンなどの機能局在部]や基底核、視床など)を指す。
- 白質とは、上記を繋ぐ神経線維全般(錐体路や錐体外路、上縦束、弓状束など)を指す。
FLAIR
・梗塞巣が高信号域
・脳脊髄液が低信号域
・脳溝の形状が把握しやすく、脳脊髄液と梗塞巣の鑑別が容易。
・陳旧性(昔)の脳梗塞は低信号域となるため、鑑別にも有効。
DWI(拡散強調画像)
・梗塞巣が高信号域
・脳脊髄液が低信号域
・頭蓋骨が移らないのが特徴
・他の画像では発症から6時間以内の画像検出が難しいが、DWIのみ発症1時間後から検出が出来るという強みがある。
- 画像を見る順番として、
①DWIで新たな梗塞巣を確認する
②FLAIRで昔の状態も合わせて確認する
まずはこの流れを覚えるだけで大まかな把握が可能になります。
画像の見分け方(これはCT?MRIの何?が無くなるために)
ちなみに…病院や施設で画像のデータを見る際、そもそもの名前が分かりにくい場面に直面します!その為に、画像をみて、それが何の画像なのか見分ける方法についても記載しておきます!
色を付けると…
このような感じになります!是非覚えてみてください♪
アルテプラーゼ(tPA)について
ティーパ?ティーピーエー?何かの薬っぽいことだけは分かるけど何だろう…脳梗塞と関係があるの?
アルテプラーゼ(tPA)というのは、脳梗塞治療薬と呼ばれているんだ。これは、閉塞した血栓を溶かし、途絶した脳血流を再開させる(血栓溶解療法)ことが可能になるんだよ。発症から4,5時間以内にこの薬剤を投与することが出来れば、脳梗塞が劇的に改善する可能性があります!
以下の項目で一つでも当てはまるとtPAは投与出来ません。参考までに載せておきます♪
既往歴
・頭蓋内出血の既往
・3か月以内の脳梗塞(TIA:脳虚血発作は含まない)
・3か月以内の重篤な頭部脊髄の外傷あるいは手術
・21日以内の消化管あるいは尿路出血
・14日以内の大手術あるいは重篤な外傷
臨床所見
・痙攣
・くも膜下出血
・全身出血の合併症(頭蓋内出血,消化管出血,尿路出血,後腹膜出血,喀血)
・頭蓋内腫瘍
・脳動脈瘤
・脳動静脈奇形
・もやもや病
・収縮期血圧(適切な降圧療法後も185mmhg以上)
・拡張期血圧(適切な降圧療法後も110mmhg以上)
血液所見
・血糖異常(50㎎/dl以下、400㎎/dl以上)
・血小板100,000/㎜3以下
・ワーファリン内服中、PT-INR1.7以上
・ヘパリン投与中、APTTの延長(前値の1.5倍以上または正常範囲を超える)
・重篤な肝障害、急性膵炎
画像所見
・CTで広汎な早期虚血性変化
・1.5T/MRI上の圧排所見(正中構造変異)
なかなか複雑にはなってきたけど、何となく分かってきた気がする!
脳出血の時はCTで、脳梗塞はMRIって事になるのかな?
惜しい!基本的な考えとしては、脳出血ではCTとの認識で悪くはないのですが、実はCTでも脳梗塞の診断は可能なんです!早期虚血サイン(early CT sign)というものがあるので、CTの所見から脳梗塞の治療(tPA)もしくは保存療法の選択を行うことが出来ます!なので、脳梗塞の方でもCT画像しか撮っていない患者さんもいるんだよ。
早期虚血サイン(early CT sign)について
本来CTでは脳梗塞の発症から24時間以降経過したものであれば分かるのですが、それ以前のものは分かりにくいです。しかし、超急性期の脳梗塞(発症後1~24時間、多くは6時間以内)では、発症して数時間でも、脳梗塞を示唆する所見が現れます。これを、早期虚血サイン(early CT sign)と言います。
基本的には医師が判断しますが、セラピストが知っておいて損はありません。
早期虚血サイン(early CT sign)とは
- 皮質・白質(島皮質)の境界消失(皮髄境界消失)
- シルビウス裂や脳溝の狭小化・消失
- レンズ核(被殻+淡蒼球)の不明瞭化
- hyperdense MCI sign(中大脳動脈高吸収所見):中大脳動脈内に血栓があることを示唆する
上記4点を示します。ちなみに、脳梗塞の場合は上記4つが全てみられる場合もあれば、1つのみしかみられないという場合もあります。なので、実際の脳梗塞の症例の画像をしっかりみながらどこにこういった所見があるかをみる必要があります。そして、これらの所見は、ラクナ梗塞では見られず、塞栓性の中後大脳動脈閉塞または内頚動脈の閉塞で出現する事が多いです。
また、島皮質やレンズ核、シルビウス裂が見えるスライス、つまり基底核レベルのスライスに注目する事になります!以下の図を参考にしてみてください♪
皮質・白質(島皮質)の境界消失(皮髄境界消失)
脳梗塞の診断に多いのがMCA(中大脳動脈)梗塞になります。そのため、MCA領域に梗塞が起こると島皮質が虚血状態になり、正常なCT画像とは異なります。若干ですが、その周囲の白質とのコントラストが消失します。そのため、不明瞭となり境目も分かり難くなってしまいます。
シルビウス裂や脳溝の狭小化・消失
これは先ほどの島皮質とも関連しますが、全体的に脳と頭蓋骨の間のスペースが狭くなり、それぞれの部位の明確な境界線が消失してしまいます。この場合は左右の脳を見比べてみて、どこか脳と頭蓋骨との隙間がないかを探しながら、特にMCA領域の部位の脳溝の隙間の消失をみつけてみてください。
レンズ核(被殻+淡蒼球)の不明瞭化
レンズ核は被殻と淡蒼球を合わせたものになり、血管支配領域も中大脳動脈(MCA)領域にあたります。つまりその部位を左右で見比べ、輪郭がどのように見えるかを判断することが大事です。
hyperdense MCA sign
これは中大脳動脈(MCA)に血栓が詰まった際に見られる現象で、MCA領域の部分が高信号となります。注意点は中大脳動脈(MCA)の石灰化とhyperdense MCA signの判別が難しいようですが、基本的に石灰化のほうが信号が高いと言われています。
簡単に考えると、これらの場所がぼんやりしすぎていたら早期虚血サインかも?という認識でいいね!
その認識でも大丈夫だよ!基本的には左右を見比べて、輪郭や濃さを判断出来るといいですね。
基本的に、脳梗塞の診断や early CT signの確認は医師の役割ですが、私たちも発症時のCT画像をみることで、どれぐらい脳が虚血状態だったのかや、手術適応だった(行った)のか、どのぐらいから覚醒や意識は変化したのかなど、把握・理解することが出来るようになります!
ここまでearly CT signが僕たちに密接に関わってたなんて知らなかったです!
そうだね。リハビリを進めていく上での予後にも大きく影響を及ぼすし、脳梗塞の治療においては 早期発見が非常に大事になってきます。発見が遅れれば遅れるほど、 脳への虚血時間が長くなり、 その分機能予後にも大きく影響してくるので、より適した考察のもと訓練内容を考え、患者さんに提供することが出来ますね!
early CT signの評価方法
early CT signの評価方法には、 ASPECTS scoreが用いられます。
ASPECTS scoreとは単純CTのearly CT signを定量化したスコア法です。
評価方法に関しては、 脳の片側の中大脳動脈(MCA)領域を 10個の領域に分け、 各領域ごとに早期虚血変化の有無を評価し、 減点方式でスコア化します。
early CT signが全くない場合は10点で、 MCA全領域にearly CT signが認められた場合は 0点になります。この評価方法の特徴としては、 読影者の間でのばらつきが少なく、 信頼性が比較的高い評価法とされていますが、 正確な読影には十分なトレーニングが必要です。
ペナンブラ(Penumbra)について
early CT signから得られた虚血状態の部位では特に、完全に神経細胞の壊死がない領域である事も少なくないです。この領域を、ペナンブラといい、 早期リハビリの重要性はこのペナンブラ領域に如何に早期から血流を増やしていけるかが重要となってきます。
よく、早期から立位訓練を行うように先輩から言われるのは、この脳血流を増やしてペナンプラ領域を改善していくためだったのかな?
立位訓練を早期から行う本来の目的は、覚醒レベルの向上が主になるかな。でも、その理由も間違ってはいないよ。発症初期の脳画像をみることで、すでにCT画像でも梗塞巣がわかるぐらい脳の虚血が進んでいれば、それだけ機能予後が悪くなる可能性を視野に入れながら訓練を進めていくことも重要だね。
脳梗塞発症すぐに病院に運ばれ、それなりに処置が施された場合は機能回復が望みやすい可能性もあるので、時期や程度を把握することも 是非脳画像から読み解いてみてください♪
ちなみに、ペナンプラの状態は、出血部位(血腫)周囲の浮腫の程度を知ることでも判断がしやすくなります!つまり、早期離床をする目的などの判断材料として、MRIのT2画像を用いることもオススメします。
ペナンブラ(Penumbra)とは、血流量が低下している領域にあって細胞死を免れている部分を指し、速やかな血管再開通により梗塞への移行を阻止できると期待される部位をさす。
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